写真:大島遼

文:大島遼
YCAM(山口情報芸術センター)のためのWayfinding(道案内)用デジタルサイネージ。館内2つの入口それぞれに設置されていた(2019年1月〜2022年3月末)。
YCAMは2フロアに10を超える展示スペースを持つ山口県の文化施設で、劇場・映画館・図書館も併設する。さまざまな目的を持った来館者が県内外から訪れるなか、このサイネージは「今日、館内では何が開催されていて、どこに行けば見られるのか」に特化した情報提示を行う。
当初はデジタルサイネージのシステム設計と、そこで提示する道案内の映像制作を依頼されたが、調べていくうちに映像では難しいとわかってきた。画面に動きがないと目にとまらない一方、来館者が長時間眺めるものでもない。多い日には1日8件程度のイベントが行われるYCAMでは、1イベントあたり数秒のなかで情報を提示し、行動につなげる必要がある。さらに立面として設置するため、矢印では正面や奥行きを表現しづらいという制約もあった。
そこで、人型イラストの「指差し」によって方向を示すことにした。情報自体は2次元のままだが、人の身体や目線はそれ自体が向きを持っている。指差しはその向きを延長する身振りで、奥か手前かをほとんど労力なく理解できる。「あちら」という指示語を添えることで、マップを読み解く労力なしに「いまここから行くべき方向」が直接伝わる。指の先を向けば天井のサインがあり、それをたどれば迷わず会場にたどり着く。画面の指差し、天井のサイン、会場の3点を、利用者の視線が滑らかにつないでいくよう設計されている。
わずかな線の違いで指示の方向が変わってしまう繊細なイラストレーションは、荒牧悠が担った。コンテンツはYCAMのWebサイトから自動生成されるが、独自開発のカーニング管理ツールにより、グラフィックデザイナー・伊達亘の普段の作業で行われた文字詰めのデータを流用できる。自動生成でありながら、人が詰めたような美しい文字組みが実現されている。什器の設計・製作はnomenaの武井祥平。磯崎新が協働を前提に設計したYCAMの天井ルーバーを利用し、運営に応じて柔軟に設置・取り外しできるだけでなく、アルミフレームで構成されているため、什器自体の改変も可能になっている。




Back to Top